HIV感染妊娠のリスク 〜ブライダルチェックで早期に発見〜

HIV

前回の記事では、HIVやエイズについての基本的な事をお話しさせていただきました。

前回の記事 ➡️ エイズとHIVの違いってなに?〜病気のお話から近年飛躍的に進んだ治療のお話まで〜

2022年の1年間で新規HIV感染者報告数は632件、新規エイズ患者報告数は252件となっています。この数字は6年連続で減少していますが、COVID-19の感染拡大によって検査を受ける人が少なかった為ではないかと考えられます。

HIV感染は決して稀な事ではなく、誰でも、いつでも感染する可能性があるという事に変わりはありません。それはお母さんの体内にいる赤ちゃんにとっても同じ事なのです。

今回は、HIV感染と妊娠の関係についてお話しさせていただこうと思います。

 

✏︎ HIV感染妊娠の報告数

HIV感染妊娠の報告数は毎年40例前後で推移していましたが、2021年、2022年ともに33例の報告がありました。減少したように見えますが、少子化による影響ではないかと言われています。

その中で、2022年においては母子感染による赤ちゃんへの感染も1件報告されています。

HIVの母子感染経路には ① 胎内感染 ② 経産道感染 ③ 経母乳感染が挙げられますが、2022年のケースでは妊娠後期に感染が判明したため治療が遅れ、胎内感染したものと考えられます。

✏︎ 参考文献 HIV母子感染全国調査研究報告書 令和4年度

✏︎ 妊婦健診でのHIV検査

日本ではすべての妊娠中の女性にHIV検査が推奨されており、その実施率は現在、産婦人科病院においては99.9%と高い水準となっています。1999年は73.2%だった事を考えると、この20年で飛躍的に伸びたと言えます。

妊娠初期に感染が分かり、適切な母子感染対策を行えば、赤ちゃんへの感染の確率は限りなくゼロに近くなり、0.5%未満にまで抑えることができるようになっています。

✏︎ 母体、赤ちゃんへの治療の負担

先述したように現在の日本では、適切な母子感染対策がされれば、赤ちゃんへの感染はほとんど予防できるようになりましたが、それでも母体や赤ちゃんへの負担は決して楽なものではありません。

妊娠中に感染が分かった場合、母体や赤ちゃんへ対して、次のような対策が取られます。


母体においては妊娠週数を問わず、感染が判明した時点から、抗HIV薬の内服が必要となります
分娩時に抗HIV薬の点滴をします(母体のウイルス量によって判断します)
陣痛が始まると胎盤から出血し感染の危険性があるため、陣痛開始前の帝王切開が選択されることがほとんどです
出生後、赤ちゃんには4〜12時間以内の早い時期に抗HIV薬の投与が行われ、4〜6週間継続します
母乳を介してHIVウイルスが感染する可能性がありますので、母乳は与えず人工栄養とします

✏︎ 参考文献 HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン

✏︎ 合併症

HIV感染が早期に分かり、感染予防対策の結果、赤ちゃんへの感染が防げたとしても、様々な合併症が報告されています。具体的には貧血、好中球減少、新生児一過性多呼吸、リンパ節腫脹などが挙げられており、それぞれに対しての対症療法が行われます。

✏︎ 赤ちゃんへのHIV感染

万が一赤ちゃんへのHIV感染が判明した場合、診断直後から抗HIV薬の投与が行われます。その後は定期的に血液検査を行い、ウイルス量のチェックを行います。前回の記事でもお伝えさせていただきましたが、適切な治療を行えば、検出できないくらいまでにウイルス量を抑えることが可能です。

✏︎ 負担を最小限にするには

HIVに感染している女性でももちろん妊娠や出産は可能です。日本では妊婦検診時のHIV検査の実施率が99%以上となっていますので、赤ちゃんが生まれてくる前に発見でき、適切な感染予防対策ができます。
妊娠中に検査を受けることはもちろん大切ですが、妊娠を計画する前に検査を受け、感染の有無を確認しておくことはさらに大切です。万が一感染が分かっても、妊娠前に治療を開始しておけば、ウイルス量を確認しながら、適切な時期に妊娠を計画することができ、母体や赤ちゃんへの負担を最小限にすることができます。

✏︎ まとめ

今回はHIV感染妊娠についてお話しさせていただきました。
HIV感染は特別なものではなく、今では誰でも感染する可能性のあるものとなりました。実際、妊婦検診で検査を受けて初めてHIV感染が判明したというケースも多いのが現状です。

そのため、結婚や妊娠前にブライダルチェックなどを受け、自分の状態を把握しておくことが非常に大切だと言えます。

当院でのブライダルチェックは基本セット(クラミジア、淋菌、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、トリコモナス、B型肝炎、C型肝炎、HIV、風疹抗体、梅毒、ホルモン検査)が29,800円(税込)、男性で精液検査をご希望の方には基本セットに精液検査をプラスして39,800円(税込)で受けていただくことができます。

⬇︎YouTubeでも解説させていただきました⬇︎

 

 

 

 

 

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