エイズとHIVの違いってなに?〜病気のお話から近年飛躍的に進んだ治療のお話まで〜

HIV

先生に質問です。「エイズ」と「HIV」の違いを教えてください。

伊勢呂哲也
伊勢呂哲也

結論から言うと、エイズは「病気の名前」であり、HIVは「病気の原因となるウイルス」のことを指します。

こちらは患者様からもよく質問をいただく内容ですので、分かりやすく説明していきますね。

✏︎  エイズとHIVの違いってなに?

HIVとは

HIVとは (Human Immunodeficiency Virus )の文字をとったもので、ヒト免疫不全ウイルスのことを言います。このHIVウイルスは私たちの体を細菌やウイルスから守る免疫細胞(Tリンパ球やマクロファージ)に感染してしまうウイルスです。

エイズとは

エイズとはHIVが免疫細胞を攻撃し続けた結果、免疫機能が保たれなくなり、健康な状態だったら感染しないような病原体に感染して様々な病気を発症することを言います。その病気(日和見感染症)は23種類あり、この中のいずれかを発症した時点でエイズの発症と診断されます。

参考➡︎ STD研究所 「エイズ指標疾患23種」

つまり、エイズとは病気の名前HIVとは病気の原因となっているウイルスの名前ということになります。

✏︎  感染経路は?

HIVの感染経路は性交渉が多く、膣を使った性交渉や肛門を使った性交渉で感染します。直腸は粘膜が薄いため、肛門を使った性交渉では感染リスクが高くなります。
その他、医療従事者の針刺し事故による血液感染や母子感染が挙げられます。

参考ブログ ➡️ HIV感染妊娠のリスク 〜ブライダルチェックで早期に発見〜

✏︎  感染したらどうなるの?

感染後の経過は、急性期(感染初期)・無症候期・エイズ期に分けられます。

急性期(感染初期)

感染機会の後2〜3週間後を急性期と言い、発熱・咽頭痛・筋肉痛・頭痛などの症状が現れます。これらの症状は10日ほど続き、自然と治ってしまいます。そのため、「風邪を引いたけれど自然に治った」と思って医療機関を受診しない方もいらっしゃいます。

無症候期

急性期の症状が自然軽快した後は、症状のない無症候期に入ります。何も症状のないまま、数年から、中には10年以上続く方もいます。症状がなくてもHIVは体の中で毎日増え続け、免疫を破壊してしまいます。

エイズ期

体の中の免疫が破壊され続けると免疫不全状態となり、先述した23項目の日和見感染症やがんなどを発症してしまいます。

✏︎ 治療はどうするの?

エイズを完全に治すお薬は残念ながらまだありません。
しかし、ウイルスが増殖していく過程の異なる時点で作用する数種類(3〜4種類)のお薬を組み合わせて使用していくことで、生涯エイズを発症する事なく過ごすことも可能となっています。しかし、毎日必ず、決められた時間に、決められた量を服用しなければならず、患者様の負担も大きいものでした。

しかし、2022年6月には日本初となる長時間作用型注射薬が承認され、1ヶ月〜2ヶ月間隔での投与が可能となりました。
参考➡︎ 日経メディカル【抗HIV薬療法における初の特効性注射薬】

さらに、2023年8月に世界初、年2回投与の多剤耐性HIV感染症治療薬「シュンレンカ」が日本での製造販売を承認されました。
参考➡︎ ギリアド・サイエンシズ株式会社【ギリアド、年2回の投与の多剤耐性HIV-1感染症治療薬として「シュンレンカ」の日本における製造販売承認を取得】

このように近年、ウイルスの増殖を抑える新薬が次々に開発され、適切に治療を受ければウイルス量がほとんど測定できないくらいまでに抑えることができるようになっています。

✏︎ 感染しないためにはどうすればいいの?

もし、周りにHIV感染症の方がいたとしても、普段の日常生活の中では感染することはまずありません。性交渉、血液感染、母子感染が感染経路ですので、私たちが意識を持って予防できるのは性交渉となります。コンドームを使用する、不特定な相手との性交渉はしないなど、自らが感染対策の意識を持つことが大切です。
また、感染を疑う行為があった場合には必ず検査を受けることが大切です。早期に発見できれば早期に治療が開始できるため、エイズを発症することなく、健康な方と同じくらいに日常生活を送ることができるのです。

✏︎ まとめ

1981年にアメリカで初めてエイズが認識されました。当時は死の病として恐れられていましたが、40年間で飛躍的に治療が進み、現在では適切な治療を行えば、決して恐れる病気ではなくなりました。HIVに感染した患者様が幹細胞移植後にウイルスが体内から検出されない状態(寛解状態)となった症例も発表されており、今後が大いに期待されます。

参考➡︎ 国際幹細胞普及機構【HIV感染の米女性、幹細胞移植後に寛解!3例目の報告】

当院でのブライダルチェックは基本セット(クラミジア、淋菌、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、トリコモナス、B型肝炎、C型肝炎、HIV、風疹抗体、梅毒、ホルモン検査)が29,800円(税込)、男性で精液検査をご希望の方には基本セットに精液検査をプラスして39,800円(税込)で受けていただくことができます。

⬇︎YouTubeでも解説させていただきました⬇︎

 

 

 

 

 

 

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