「ブライダルチェック」という言葉を聞いたことのある方は多いと思います。主に結婚前や妊娠前に行う健康診断の事を指し、お互いに感染させないようにするためや、将来生まれてくる赤ちゃんのためには欠かせない項目です。ブライダルチェックの項目には性感染症(性病)の検査が含まれていることがほとんどで、結婚前や妊娠前に限らず、性病が心配という方がそのチェックのために検査にいらっしゃるというケースも実は多いのです。本日は性病の患者様を多く診察している泌尿器科専門医の立場からブライダルチェックの中の「性病の検査」について詳しく説明させていただきます。
性感染症( 性病)について
性病は感染していても自覚症状がないケースもあるため、適切なタイミングで検査をする事が大切です。特に結婚を控えたカップルにとっては、未来のパートナーとの健康な生活をスタートさせるために、性病の検査を行うことはとても重要です。性病は検査をするタイミングがなかなかないため、結婚を機に検査をしてはじめて感染に気づくという方も少なくありません。また、ブライダルの予定がなくても、性病のチェックのためにブライダルチェックを利用する方も多くいらっしゃいます。それでは一般的な性病について説明させていただきます。
淋菌
潜伏期間は2〜7日です。性行為によって感染し、男性は排尿時痛や膿みを伴う尿道炎、女性は緑黄色の濃いおりものの症状などを引き起こします。口を使った性行為で、喉に感染することもあります。一般的にクラミジアより症状が強い傾向があります。放置すると菌が体の奥まで入り込んでしまい、精巣や子宮に炎症をきたし、不妊の原因となる場合があります。検査方法は男性は尿検査、女性は膣から綿棒を入れて粘膜を拭う検査で、淋菌の菌がいないかPCR検査(遺伝子の核酸を調べる検査)をして調べます。陽性であった場合、抗菌剤で治療しますが、耐性の淋菌も増加していますので、必ず医療機関を受診しましょう。感染の機会があった時から2〜3日経っていれば検査できます。
クラミジア
潜伏期間は1〜4週間です。性行為によって感染し、男性は排尿時痛を伴う尿道炎、女性はおりものの異常などの症状を引き起こします。クラミジアは性感染症の中でも最も多い感染症です。口を使った性行為で、喉に感染することもあります。一般的に淋菌より症状が軽い傾向がありますが、放置すると菌が体の奥まで入り込んでしまい、精巣上体炎や卵管炎を引き起こし、不妊の原因となる場合があります。検査方法は男性は尿検査で、女性は膣から綿棒を入れて粘膜を拭う検査で、クラミジアの菌がいないかPCR検査(遺伝子の核酸を調べる検査)をします。陽性であった場合、抗菌剤で治療しますが、決められた期間しっかりと治療しないと完治しないことがありますので、必ず医療機関を受診しましょう。感染の機会があった時から2〜3日経っていれば検査できます。
マイコプラズマ・ウレアプラズマ
潜伏期間は1〜3週間です。淋菌やクラミジアの検査をしても「陰性」にもかかわらず、違和感などの症状が続いているという場合にはマイコプラズマやウレアプラズマに感染している場合があります。こちらも性行為によって感染し、不妊の原因となる場合があります。また、ウレアプラズマは感染していても症状が出ないことが多く、知らないうちに病状が進んでしまう場合もありますので注意が必要です。検査方法は男性は尿検査で、女性は膣から綿棒を入れて粘膜を拭う検査です。陽性であった場合、治療には抗生物質を使用します。感染の機会があってから2〜3日経っていれば検査できます。
トリコモナス
潜伏期間は1〜3週間です。性行為によって感染し、感染すると男性は排尿時痛、女性は性器の痒みや悪臭のするおりものが大量に出てくるなどの症状がありますが、無症状で経過する方もいらっしゃいます。気づかないうちに症状が進むと、男性は前立腺炎を起こす可能性や、女性が妊娠中に感染すると早産になる可能性があります。自然治癒することはありませんので、しっかりと抗寄生虫薬で治療する事が必要です。検査方法は男性は尿検査で、女性は膣から綿棒を入れて粘膜を拭う検査で調べます。感染の機会があってから2〜3日経っていれば検査できます。
梅毒
潜伏期間は約1ヶ月です。性行為によって感染し、近年感染者が急増している感染症です。2022年には東京都で調査が始まって以来最も多い報告数(3677件)になっています。初期症状として、感染した場所(性器・肛門・口など)に硬いしこりができますが、痛みや痒みを伴わないため、見逃してしまう可能性があります。そのまま放置し、何年も過ぎてしまうと、心臓や血管、神経に炎症が現れ、命に関わる可能性もあります。現在は確立された治療法がありますので、早期治療で完治が可能です。感染の機会があってから4週間以上経っていれば検査できます。
HIV
感染経路は性行為や血液感染です。感染しても初期にはほとんどのケースで症状がなく、自覚がないまま何年も過ぎてしまう恐れがあります。感染したまま治療しないでいると免疫力が低下し、数年から十数年でエイズを発症すると言われています。エイズとは日和見感染症など(カンジタ・結核・細菌性肺炎など)様々な合併症が出た状態を言います。現在のところ完治の薬はありませんが、抗HIV薬でウイルスの増殖を遅らせる事が可能ですので、早期発見・早期治療が非常に大切です。感染の機会があってから90日以上経過しないと正確な結果が出ないことがありますので、検査を受ける時期には注意が必要です。
参考ブログ ➡︎ HIV感染妊娠のリスク 〜ブライダルチェックで早期発見〜
参考ブログ ➡︎ エイズとHIVの違いってなに?〜病気のお話から近年飛躍的に進んだ治療のお話まで〜
B型肝炎
感染経路は性行為や血液感染です。肝臓を攻撃するウイルス感染症であり、倦怠感や食欲不振から始まり、肝機能障害、肝硬変、肝臓がんと症状が進行してしまう恐れもあります。そのため、早期発見・早期治療が非常に大切です。感染の機会があってから90日以上経過しないと一般的な検査では正確な結果が出ないこともありますので、検査を受ける時期には注意が必要です。
C型肝炎
血液検査で調べます。感染経路は性行為や血液感染です。肝臓を攻撃するウイルス感染症であり、肝硬変、肝臓がんと症状が進行してしまう恐れがあります。C型肝炎ウイルスに感染しても約30%の方は体の中からウイルスが自然に排除されます。一方で約70%の方はウイルスが排除されずに体に残ってしまいますので、早期発見・早期治療が非常に大切です。C型肝炎も感染の機会があってから90日以上経過しないと一般的な検査では正確な結果が出ないこともありますので、検査を受ける時期には注意が必要です。
泌尿器科専門医の立場から
当院にも性感染症( 性病)の患者様が多くいらっしゃいますが、複数の性病に同時に感染している方が非常に多いです。また、淋菌やクラミジアなどに感染している場合には、粘膜が弱くなってHIV にも感染しやすくなります。そのため、「性病に感染したかもしれないが、現在のところ症状がないので何を調べたらいいのかわからない」という方には数種類の性病の検査がセットになっているブライダルチェックをお勧めしています。性病を放置することは、不妊の原因になったり、また、パートナーに感染させてしまう恐れがありますのでとても危険です。
まとめ
性病というと怖いイメージを持ってしまうかもしれませんが、感染が分かったとしても適切な治療法が確立されていますので、安心して検査を受けてみてください。
当クリニックグループのブライダルチェックは基本セット(クラミジア、淋菌、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、トリコモナス、B型肝炎、C型肝炎、HIV、風疹抗体、梅毒、ホルモン検査)が29,800円(税込)、男性で精液検査をご希望の方には基本セットに精液検査をプラスして39,800円(税込)で受けていただくことができます。大宮・上野・池袋・新橋のどのクリニックでも受けていただくことが可能ですので、お近くのクリニックでお受けください。
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